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星原昌一のかごしまぶらり歩き

第11回 鋸の目立て

鋸(のこぎり)の目立てと聞いてもピンと来ない人も多いだろう。七~八年前だろうか小春日和の日に、農家の庭先で偶然出会った風景である。
鋸は以前は農村の各家庭にあったもので、切れなくなると歯を1本づつ研いでいくものだった。太平洋戦後、しばらくは農村では良く見かけていた光景である。
生活が犠牲になってくると、電動鋸などができて軽く木を切ったり割ったりできるようになった。
便利さに懐かしい風景は、しだいに消えていってしまった。
孫の見る前で日当たりの良い場所に、藁で織ったむしろを敷いて、ゆっくりと鋸の歯を研いでいく。孫は、目を光らせて珍しい作業を見守っている。どうしてそんな事をするの。孫の質問にやさしく昔話を交えながら教えていく。
核家族の家庭が増えたいま、微笑ましい光景だった。

鋸の目立て