鹿児島は、今が秋まっさかりである。山に野に車を走らせて、見晴らしの良い場所で降り深呼吸をすると胸の置くまで秋の風が吸い込まれている。ススキの穂花の群れが、射光船にきらめきゆらめいている。
山に、路傍に、黄色い花びらが秋の日に眩しくさいているのが、ひときわ目を引き付ける。ツワブキの花である。群れをつくるかたまり、それが点々と散らばり咲いている。
濃緑の艶が、静かさを招き寄せるように陰を作り出していた草むらが、いま輝く黄色の主役を表に出して来ている。初冬まで、路傍を飾るヒロインである。
南薩摩は坊津から笠沙路の海辺の道に、さらに色濃く咲いている。
夕日に輝く海を背景に咲くツワブキの花は、ひとしお美しく際立つ。秋の旅情を慰めてくれるように。
2014年12月20日