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星原昌一のかごしまぶらり歩き

第19回 クモ合戦

旧暦五月五日に近い日曜日。姶良郡加治木町の伝統行事「クモ合戦」は、町福祉センターで午前八時半の開会式から始まる。
世界でも珍しいクモ合戦はこのたびオーストラリアのテレビが二〇〇四年に、一ケ月かけて取材。〇五年に世界、一五八ヵ国で放映される。なにしろ世界の映像コンクールのドキュメンタリー部門、三八〇点の応募作品の中でナンバーワンになった。
小さな昆虫が闘い、それに熱中している大人たち。世界の人は見たら、驚きそして忘れることはできないだろう。
参加者は、加治木町の住人だけでは済まなくなっている。東京、神奈川、奈良、熊本と全国から参加者が増えてきている。
熊本県から来た人がことしの優勝をさらった。地元では三十人ぐらいの愛好者があつまり、クモを闘わせているというはまりこみ。
合戦出場のクモは、コガネグモ。黒い腹に鮮やかな黄緑の線が入った、いわゆる女郎グモが使われる。マニアたちは合戦の前に、県内各地に遠征して女郎グモを捕まえてくる。捕ってきたクモは庭の竹やぶや木の枝といわず、軒下、玄関、座敷をクモの巣だらけにして飼育している。
いざ合戦となれば、焼酎を吹きかけ闘争心をいやがうえにも燃えさせる。二匹の小さな昆虫が、細い棒の上で戦う「クモ合戦」。のぞいてみる価値がある。

クモ合戦