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星原昌一のかごしまぶらり歩き

第20回 串木野さのさ

√―串木野   みなとの別れには
思わず知らず 胸せまり
男なみだをついほろり  さのさ

鹿児島の民謡として多くの人に親しまれて歌われてきた「串木野さのさ」。カラオケ以前は、盛んに酒席で歌われてきた。
波の音が聞こえてくるようなゆっくりと流れる哀調のある歌声を聞いていると、飲む焼酎の酔いも波にたゆとっているようである。
明治の初期、串木野の漁師たちはマグロを追って長崎県五島沖に出漁、玉之浦、富江港に水揚げしていた。そこで時化のときなどに遊んだ芸者町で歌われていたのが「五島さのさ」だった。
覚えた歌をもとにして、故郷、恋人を思い、海で犠牲になった仲間をしのび歌詞を替えて歌った。それが漁閑期に帰り、若者たちが浜辺で歌い広まった。ゆっくりとした哀調ある調子の歌は「串木野さのさ」と市民に愛され、夏祭りで踊られ、コンクールも催されるようになっている。

√夕空の月星眺めてただ一人
あの星あたりが主の船
とびたつほどに思えども
海をへだててままならぬ   さのさ

串木野さのさ