鹿児島の神社では、二月の始めから田植えを前に、ことしの豊作を祈願する打ち植え祭りが盛んに行われる。
県内で約七十ヶ所はあると言われており、多くの人が集まる祭りもあるが、地域でひそやかに行われる祭りも多い。
「団子祭り」もそのひとつ。川内川を見下ろす山の中にたたづむ小さな神社。足元から冷え込んでくる二月中旬。午前十時過ぎに始まる。
昔はぜったいに人に見せない祭りだった。こっそりとのぞく人が見つかると、青年たちがどこまでも追いかけてきた。
山に逃げ込み骨折した人もいたという。土地の人は「秘祭」だという。
旦那が田を耕し、嫁がもってきた団子の昼飯を、「まずい」とけなす。
祭りの後に神主が籾をまき、参加者が「ずくら」(昔は着物のふところ)を広げて籾をひろう。そのときに「カーカー」とカラスの鳴き声を真似て叫ぶ。
ひっそりとした森の神社の境内、川のせせらぎが聞こえてくる。豊作を祈願する。昔の農民のせつない思いがする祭りだ。
2014年12月20日