鹿児島県内の神社でことしの豊作を祈願する春の祭りが、二月から四月までに60数箇所で行われる。それぞれの地方、土地によって祭りの形は違うが木造りか、人が演じるか、いろいろな牛が出てそれを操るテチョ(亭主)、デカン(下男)などが即席のやりとりで観客を笑わす。
かねてひっそりとした小さな神社の境内も、この朝は祭りの準備で忙しい人達の声がにぎやかに聞こえてくる。過疎に人影が薄い農村が、華やぎを取り戻す時間である。
祭事が始まり神主の祝辞があがるころ、境内の近くには人垣ができてくる。神社によって様式は変わるが、テチョが出てデカンを呼び、牛が出てくるころが祭りは最高潮。
コシキを被った田の神が、観客をしゃもじで頭を撫でていく。健康に、豊作とことしの家内安全もかなうとあって、笑いの中に幸せを祈る。
農村に古くから伝わる祭りは、過疎にも負けずいつまでも続いて欲しいと願う。