南薩摩地方の十五夜行事は、各地によって独特なおもしろさがある。その中でも大好きな行事は、坊津町鳥越の「嫁女送り」である。
十五夜の三日前に、綱になるチガヤを束ねて頭に季節の花を飾り、見るからに花嫁のように美しい「嫁女」を山から降ろすのだ。
チガヤは昼から根を引き抜いて集められ、一抱えもある大きな束になる。夕方には美しく飾られ、出番を待っている。
暗くなると白いフンドシを絞め、手ぬぐいを頭にかぶった、中学生・高校生達が集まってくる。山の中腹に置いてあった「嫁女」をかつぎ、燃える松明で前後を守り一つずつ降りてくる。
道の片側、崖の方には赤々と松明が燃やされ、一方には裸の青年たちが手をつなぎ「嫁女」を迎える。
「よーいやな、よーとこせー」と囃しながら、時おり手をつないで横に引っ張りあう。
この行事の後には、青年たちがぶつかり合う「どんとせ」がある。
「どんとせ」は十五夜当日よりも盛り上がるが、今年は残念にも台風のために月を拝めなかった。
2014年12月20日